Smiley face
写真・図版
墨づくりの様子=錦光園提供
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 日本伝来から1400年続く墨文化がいま、後継者問題などで存続が危ぶまれている。この貴重な文化を未来につなげたいと、固形墨の産地として有名な奈良でクラウドファンディング(CF)に挑戦している墨工房がある。資金調達だけでなく、新たな需要を広げるため、魅力発信にも力を入れる。

 11月下旬、奈良市三条町の「錦光園」を訪れた。のれんをくぐり引き戸を開くと、墨の独特な香りにつつまれる。7代目墨匠、長野睦さん(47)に案内されて奥へ進むと、吸い込まれそうなほどの漆黒に染まった工房にたどり着いた。

 当日の気温は15度。少し肌寒かったが、「(墨にとっては)めっちゃ暑い。仕事にならない」と長野さん。墨づくりの適温は0~10度で、それ以上だと煤(すす)や膠(にかわ)、香料を混ぜ合わせた墨が固まらない。作業は冬場に限られ、早朝から始まるという。

 奈良墨は、全国の固形墨生産の大部分を占めるが、取り巻く環境は厳しい。奈良製墨組合によると、生産量は昭和10年ごろをピークに、近年は減少傾向にある。中でも、煤の種類の一つである、赤松を燃やした「松煙」を生産する職人は、全国でも近畿地方に1人残るだけだという。

 松煙墨は、墨が日本に伝来し…

共有